
シチズン初の女性向け腕時計は、当時主流のデザイン。丸くて優しいフォルムは、働く女性にも多く受け入れられた。横から見てもコロンと丸くて優しいフォルム。

先カンは細見ですが、バンドを通した際には、かわいらしいラグとなります。

12時位置のレイアウトは、文字サイズ・幅など工夫されており、6時位置の小秒針サークルとのバランスも絶妙です。

薄いりゅうずですが、径が大きいので回しやすく、アールで構成されたローレットのギザギザ感もほど良い触り心地。

ケース本体は2分割のようですが、裏ぶたも含めて段差なく、コロンと一体となっています。ボックス球面プラスチック風防もあわせて全体的に丸くやさしい感じの仕上がりです。

切分に重なる曲げの分針で、視認性はしっかり確保されています。座の部分も平らで美しい針。Cマークの立体感や、見る角度によってはハート型に見える時字も良いバランスです。
ENGINEER'S EYE
リアリスト
Cal.Kはシチズンとして初めて女性用腕時計に搭載することを企図して開発された小型ムーブメントであり、シチズン初の腕時計ムーブメントCal.Fの発売から4年たった1935年にこのモデルに搭載されました。1930年代に製造されたシチズンの腕時計用ムーブメントには現実主義的な面がいくつかあります。
一つは、「別名時計」といい、取引先であった卸売業者が指定したブランドで製造されたものが少なからずあったことです。シチズンとは別の銘が刻印されたシチズンムーブメントがつくられ、今でもアンティーク時計市場で時折見ることができます。ブランドに応じてブリッジ形状を変更し、オリジナリティをだしている点など、相当きめ細やかな仕事がなされています。
もう一つはねじピッチを時計業界で広く普及していたスイスの規格に合わせたことです。初代懐中時計はメーカー純正部品を使ってもらうよう、あえてドイツの規格を使ったため、時計修理の現場で汎用のねじを使いまわすことができないという声に対応したものであったと伝えられています。地道な努力で戦中を生き延びた貴重なムーブメントです。