
ケースは外側からバンドの固定箇所が見えないようにデザインが工夫されています。ケース上面のみ旭光ヘアラインにすることで、特徴的な上面形状が浮き立ちより際立ちます。薄く見せたいがバンド固定部は厚みが必要で、その両方を満たした結果がラグ先の形に表れています。

薄いりゅうずは存在感を消し、ケースシルエットに完全にフィットしています。

上面のみ旭光ヘアラインでその他をミラー仕上げにすることで、特徴的なシルエットをより強調して見せています。

特徴的なケースに対して文字板はシンプルですが、立体的なダイヤルリングが程よいアクセントとなっています。

より薄く見せようと工夫した結果がケース形状に現れています。ぷっくりとしたボックスガラスが有機的なケースにマッチしています。

ダイヤルリングには12、3、6、9時の所だけ刻みが入っており、シンプルな中に少し要素を入れることで、特徴的なケースと上手く調和しています。

裏ぶたにはこだわり抜かれたX-8の象徴的刻印が施されています。
ENGINEER'S EYE
てんぷがモーターになった!
シチズンはX-8の駆動方式を「テンプモーター方式」と呼称しました。従来の機械式時計は動力ぜんまいの力が歯車を介しててんぷに与えられ、てんぷが固有にもつ振動数にシンクロして歯車の回転速度が決まります。てんぷを調速機と呼ぶこともあるゆえんです。一方、X-8はてんぷに従来の調速機としての役割のほか、「モーター」の役割もになわせ、てんぷの力で歯車を回しているのです。
電子時計としては国産初となった本モデルは、1964年に開設された技術研究所のメンバーが中心となり開発されました。ボタン電池、トランジスター、永久磁石という新しい要素開発が必要となったことは、時計メーカーに電子技術が取り入れられるきっかけとなり、のちのクオーツ開発にもつながっていく端緒となりました。
では伝統的な機械式時計の調整技術は不要となったのかといえばそうではありません。時間精度はやはりてんぷの出来ばえに左右されるものです。しかも動力ぜんまいによる駆動と異なり、てんぷの振動周期の安定性が高いことから、公認クロノメーター品もラインナップされるなど、新旧の技術が見事に融合。総合力で完成度を高めた製品でした。