
細縁ベゼル、細ラグ足、カーブ文字板、ボックスガラス、大きめのりゅうず、クラシック時計の定番と言えるモデル。ころんとした丸みある形状。シンプルながらほっこりかわいらしい印象。

裏ぶたの球面形状は、手首にあたる面が少なく心地よい肌触り。ガラスも袖口に引っかかることが少なく、ガラスと球面の裏ぶたはシンメトリーに近い美しいバランス。

りゅうずはころんとした球面。ケース側面のデザインにも合っています。

カーブ文字板のアールに合わせ針の先端を曲げることで、文字板と針の距離が近くなり、視認性が向上しています。ガラス、文字板、針の外周部をアール形状にすることで、センターを薄く見せ、緻密で上品な印象を与えています。

ロゴはアールで構成され、CITIZEN Juniorの書体は筆記体で洒落た印象。
ENGINEER'S EYE
ちょっとうれしい輪列配置
ジュニアはCal.S(新中三針)の設計を踏襲した若年層向け製品。実はこのCal.Sこそ、シチズンの復興と進歩を象徴するムーブメントでした。戦後入社した機械系エンジニアを中心にてんぷや脱進機の最適化が順次実施された時期に世に送り出され、国産初の耐震装置であるパラショックの性能実演として、地上30m上空のヘリコプターから時計を投下したパフォーマンスで使われたのもこのムーブメントです。
そのなかでも「S特別調製品19石」は赤めっきやちらねじ付きてんぷの体裁も立派。そのような優良品をもとにつくられているだけあり、コストダウンバージョンといえども注目すべきポイントが多い時計です。
特異なのは角穴車の上に豪快に配置された三番車と四番車。後年の本中三針構造、たとえばシチズンホーマーのように四番車を角穴車の下に配置する構造だとどうしても歯車の存在感が薄れる傾向にあり、それはそれでスマートでよいのですが、このジュニアのようなメカっぽく立体的な設計も、むしろ好ましく映ります。