
ベゼルよりも若干大きいケース。段差などはなく、連続したサーフェスとなっています。

プロダクトというより、卵を手に持っているような感覚。

紐の結び目がケースに当たるので、ボウがケースにあたって傷がつくことがありません。分針の先が曲げられており、時刻が見やすいです。

琺瑯独特の、反射がざらっとしているのに滑らかな艶感が、なんとも言えないやさしい白色の文字板。。

りゅうずはぜんまいを巻き上げるための大きさで、カットされたローレットはほどよく指にかかります。りゅうずパイプ側の端が山型になっているのがカットの証明です。

すごく大きなてん輪が振れるたび、チラねじが輝きます。真っ先に目に入る「丸穴車」と「角穴車」はエッジがきらめき、コリマソナージュがとてもきれいです。

今も田中貴金属の高級ラインに使用されるホシエスマークが刻印されています。蓋の内側にはペルラージュ模様がありますが、ミラーが強く時計の機械が写りこんでいます。「東京電力合併記念」と刻印されています。ガンギを留める人工ルビーは地板との距離があり、透過してガンギがピンクに光ります。
ENGINEER'S EYE
工業家・山崎亀吉
シチズンの創業者山(cid:8443)亀吉は貴金属商であり、同時に工業家でもありました。彼がウオッチ製造をこころざし、尚工舎時計研究所を設立した1918年にはすでに近代的な手法による装身具の製造もおこなっていましたが、最初の懐中時計「CITIZEN」は彼の哲学、つまり装飾品としての審美性のみならず、工業製品としての精度と信頼性をも求める姿勢を体現していたものと考えられます。
まず、てんぷは温度変化、錆、磁気に強いとされる特殊な合金で製作され、上級グレード品は巻き上げひげぜんまいを採用、平置きの日差を20秒以内に設定したことにその工業志向をみてとれます。
もちろん装飾品としての体裁も見事で、当時の仕様書によると文字板を含むムーブメント厚は27ドゥジエム、現在の単位に換算すると約5mm。機械の堅牢性と正確性とに影響を及ぼさない範囲で、できるだけ薄型にしたものでした。
上級グレード品は銀側、15石入り、ブリッジには丁寧にコート・ド・ジュネーブがほどこされ、当時の一般的な舶来品となんら遜色のない水準を示しています。